膵臓
膵臓(Pancreas)は長さ15cm程度で胃の後下部にあります。膵臓から膵液を分泌する主膵管は総胆管と合流し、十二指腸乳頭部に開口しており、副膵管はその上部に開口しています。膵臓では腺房細胞(Acinar cells)によって多くの消化酵素が産生され、膵管から十二指腸へ分泌されます。膵臓はまたホルモンを産生する場所でもあります。
膵臓内にはランゲルハンス島(islet of Langerhans)と呼ばれる細胞集団があります。その中のアルファ細胞はグルカゴン(Glucagon)という血中グルコース濃度(血糖)を上昇させるホルモンを産生します。またベータ細胞はインスリン(Insulin)を産生し、血中グルコース濃度を低下させます。デルタ細胞はこれらのホルモン分泌を調節するソマトスタチン(Somatostatin)を分泌します。
膵液 (Pancreatic juice)
膵液は弱アルカリ性の無色透明液で1日に800-1000mL分泌されます。膵液の95%以上は水分ですが、消化に重要な酵素、塩類等を含みます。特にNaHCO3は胃液の酸性を中和するのに重要です。
膵液も条件反射や食物が口腔内に入ることによる脳相(Cephalic phase)と食物が十二指腸内に入った場合の腸相(Intestinal phase)に分泌されます。
酵素 | 機能 |
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トリプシノーゲン (Trypsinogen) | 活性化されてトリプシンになり、蛋白をペプチドに分解する。 |
キモトリプノーゲン (Chymotrypsinogen) | 活性化されトリプシノーゲンになる。蛋白をペプチドに分解する。 |
プロカルボキシペプチダーゼ(Procarboxypeptidase) | 活性化されカルボキシペプチダーゼになり、ペプチドのC末端から分解する。 |
膵アミラーゼ (Pancreatic amylase) | 澱粉を分解する。 |
膵リパーゼ (Pancreatic lipase) | 脂肪をグリセリンと脂肪酸に分解する。 |
リボヌクレアーゼ (Ribonuclease) | RNAを分解する。 |
デオキシリボヌクレアーゼ(Deoxyribonuclease) | DNAを分解する。 |
小腸
小腸は幽門部に続き、回盲部に終わる長さ3~4m、直径4~6cmの管状構造をしています。小腸は十二指腸、空腸、回腸に分類されます。小腸は栄養素の吸収に重要な臓器であり、栄養素の吸収面積を大きくするための構造を持っています。小腸の内壁には輪状ひだがあり、輪状ひだには多数の絨毛(Villi)におおわれています。さらにそれぞれの絨毛を構成する細胞の表面には微絨毛(Microvilli)があり、栄養素の吸収面積を単なる管状構造に比べ約600倍拡大しています。
小腸に入った食物は腸管の運動によって消化・吸収が促進され、大腸の方へ輸送されます。
蠕動運動 (Peristalsis)
小腸は内側の輪状筋と外側の縦走筋よりなり、2層の間にはアウエルバッハ神経叢があります。小腸の輪状筋の収縮は口側から肛門側へ秒速1~2cmの速度で向かい、食物を運びます。
振子運動 (Pendular movement)
比較的近い場所の縦走筋が収縮と弛緩を交互に繰り返し、食物を混和します。速度は4~5cm/秒です。
分節運動 (Segmenting movement)
比較的近い場所の輪状筋が収縮と弛緩を交互に繰り返し、食物をよく混和します。
腸液
腸液は1日に約2.4L程度分泌されるアルカリ性の液です。十二指腸のブルンナー腺(Brunner gland)からは主として粘液とNaHCO3が分泌され、小腸のリーベルキューン腺(Lieberkuhn gland)からの分泌液には酵素が含まれます。これらの消化酵素は小腸上皮細胞の微小絨毛付近に大量に分布しており、微小絨毛近くで消化された栄養素が効率よく細胞内に吸収されるようになっています(膜消化)。
酵素 | 機能 |
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エンテロキナーゼ (Enterokinase) | トリプシノーゲンをトリプシンにする。 |
マルターゼ (Maltase) | 麦芽糖をブドウ糖に分解する。 |
腸リパーゼ (Intestinal lipase) | 脂肪を分解する。 |
ラクターゼ (Lactase) | 乳糖をブドウ糖やガラクトースに分解する。 |
シュクラーゼ (Sucrase) | 蔗糖をブドウ糖や果糖に分解する。 |
ジペプチダーゼ (Dipeptidase) | ジペプチドをアミノ酸に分解する。 |
アミノペプチダーゼ (Aminopeptidase) | ポリペプチドのN末端から分解する。 |
小腸における吸収
小腸における糖の吸収機構
小腸上皮の微絨毛近くの細胞膜には糖を輸送する担体(キャリアー)蛋白が存在します。ブドウ糖(グルコース)を輸送する担体はSodium-dependent glucose transporter(SGLT)と呼ばれナトリウムイオンと共に細胞内にグルコースを取り込みます(共輸送)。ガラクトースもこの担体によって輸送されます。フルクトースはナトリウムイオンを必要としない担体によって輸送されます。細胞内に取り込まれたナトリウムイオンはナトリウムポンプ(Na+-K+-ATPase)によって細胞外へくみ出されます。
大腸
大腸は盲腸(Caecum)、結腸(Colon)、直腸(Rectum)よりなる長さ約1.5mの管状構造をしています。大腸からはアルカリ性のの大腸液が分泌されていますが、消化酵素はほとんど含まず、粘液によって粘膜の保護を行っています。大腸では消化はほとんど行われず、水分とナトリウムの吸収を行っています。また大腸内には多数の腸内細菌がおり、小腸で消化されなかった物質の処理を行っています。これら細菌による発酵はインドール、スカトールなどの悪臭物質を産生します。