細胞周期(Cell Cycle)
体を構成する細胞は成長過程で分裂・増殖します。また古くなって働きを終えた細胞は新しく増殖した細胞に置き換えられます。このように細胞の分裂する過程を細胞周期(Cell Cycle)といいます。細胞周期はいくつかの時期に分類されます。
- G1(Gap1)期:M期とS期の間にあり、細胞によってその長さが違います。
G1期の細胞は細胞分裂のためにS期にすすむか、分裂せずに静止期(G0期)に入るか、細胞周期を離れて分化し、特別の機能を持つ細胞になる等の運命をたどります。 - S期:染色体DNAが合成され、複製がつくられます。
- G2(Gap2)期:S期とM期の間に位置し、細胞分裂の準備期です。
- M期: 細胞の分裂が起こります。M期は約30分程度です。
細胞分裂(Cell Division)
細胞周期を経過してM期に達した体細胞は細胞分裂をします。細胞分裂は核が分裂する有糸分裂(Mitosis)と細胞質が分かれる細胞質分裂(cytokinesis)にわかれます。M期はさらにいくつかの時期に分類されます。
細胞死(Cell Death)
壊死 (Necrosis) | アポトーシス (Apoptosis) | |
---|---|---|
細胞死 | 受動的(傷害等の外因)非生理的 | 能動的(遺伝子のプログラムによる)生理的細胞死 |
炎症 | あり | なし |
核・DNA | 著変なし | DNA の規則的断片化(DNAラダー) |
ミトコンドリア | 腫脹 | 変化なし |
細胞質 | 膨張 | 縮小、断片化(アポトーシス小体) |
細胞は増殖するだけでなく、さまざまな原因によって死滅します。たとえば怪我をするとその部分の細胞が壊死し、炎症が起こります。これとは別にたとえば身体の形成段階で不必要な部分の細胞が自主的に死滅したり、突然変異等で遺伝子に変異を起こした細胞は自主的に死滅します。このように自主的(能動的)に細胞が自殺することをアポトーシス(Apoptosis)といいます。
アポトーシスは遺伝子のプログラムに沿った細胞死で、受動的な細胞死である壊死とは区別されます。細胞の形態を観察すると壊死とアポトーシスでは左表のような違いがあります。たとえば、アポトーシスでは細胞質が縮小断片化し、アポトーシス小体とよばれる構造が見られます。また、染色体DNAが約200bp程度の長さの倍数に断片化し、DNAの電気泳動にてDNAラダーと呼ばれるハシゴ状のDNA断片が見られます。アポトーシスは数時間で完了しますが、壊死過程はより長い時間をかけて進行します。
アポトーシスの制御機構は複雑ですが、Bcl-2や蛋白分解酵素であるカスパーゼ(Caspase)、DNA分解酵素であるDNA断片化因子(DFF)等が関与しています。
アポトーシスは生物の発生過程、癌、自己免疫疾患、AIDS等と関連があるといわれています。
ガン細胞(Cancer)
正常の細胞は増殖しますが、ある程度増殖するとそれ以上の細胞分裂は停止します。がん細胞はこの増殖が無限に続く異常細胞で、周囲の正常組織を破壊したり、転移によって遠隔臓器で増殖したりします。
がん細胞には染色体数の異常、染色体の部分欠失、複製や遺伝子の突然変異等が見られます。これらの異常によってOncogeneと呼ばれる細胞増殖を誘導する遺伝子が活性化したり、がん抑制遺伝子(tumor suppressor gene)の機能低下で細胞増殖が促進します。
たとえば肺がんにはP53というがん抑制遺伝子に突然変異がみられるものもあります。がんの治療には外科的摘出、抗がん剤、放射線や遺伝子治療等が行われています。
幹細胞(Stem Cell)
幹細胞は増殖能をもつ未成熟な細胞で、さまざまな種類の細胞に分化する可能性を持ちます。
(1) TotipotentまたはPluripotent Stem Cell
万能幹細胞とも呼ばれ、受精卵や胎児の細胞(Enbryonic Stem Cell: ES cell)に由来します。体を構成するほとんどの種類の細胞に分化できる可能性を持ちます。
(2) Multipotent Stem Cell
造血幹細胞のように大人の骨髄から採取できるが骨、脂肪、軟骨細胞等限られた種類の細胞にしか分化できないものをいいます。