血液中の肝臓に関係した成分及びその量を調べることによって、肝臓の状態を知ることができます。血液を通じての肝機能検査は20項目以上あり、通常よく調べるのは以下のような項目です。
肝臓の障害度を見る
GOT、GPTはいずれも肝細胞の中で活動する酵素です。肝臓に肝炎などの障害が生じると、肝細胞が破壊され、血液中にGOT、GPTが漏れ出します。従って、血液の中のGOT、GPTの値を調べることを通じて、肝臓にどの程度の障害があるかを知ることができます。
健康な状態でも、新陳代謝のため、古くなった細胞が壊れ、GOT、GPT酵素が血液中に出てきます。健康な状態でのGOT、GPTの基準値は30IU以下です。
IUは国際単位ですが、実はこの国際単位はまだ世界的に統一されていないため、測定機器や試薬の種類によって、測定結果にばらつきがあるのが実状です。また、医療機関によって、使用している機器や単位が異なるので、自分で判断しないで、必ず医師に確認して下さい。
肝炎の急性期では、GOT値が基準値よりかなり高くなります。数百、時には数千になることもあります。しかし肝炎が慢性化すれば、これらの値は千以下に下がります。
肝細胞の働きを見る
アルブミン
アルブミンは肝臓で合成される蛋白です。アルブミンは高い濃度で血液中に存在し、血液の浸透圧を調節する役割を果たします。肝臓の働きが低下すれば、合成されるアルブミンも減り、血液中のアルブミンの量も少なくなります。アルブミンの量を調べることによって、肝臓の働きをチェックすることができます。
血液中のアルブミンが少なくなれば、血液の浸透圧が下がります。これによりむくみや腹水が引き起こされます。
総コレステロール
コレステロールは副腎皮質ホルモンや胆汁酸の原料になったり、細胞膜を構成したりするものです。コレステロールは肝臓で合成されますが、肝炎や肝硬変などによって肝臓の働きが弱くなると、コレステロールの合成能力が低下し、血液中のコレステロールの量が減少します。
プロトロンビン時間
プロトロンビンとは血液凝固因子のことです。プロトロンビンは肝臓で合成され、血液の中に送り込まれます。肝硬変や劇症肝炎などの肝疾患で肝臓の働きが低下すると、血中のプロトロンビンの量も減り、血液の凝固時間が長くなってしまいます。
プロトロンビン時間は血液が凝固するまでの時間を計測する検査です。プロトロンビンの正常値は10~12秒(70%)です。
アンモニア
体の中でできるアンモニアは肝臓で処理されます。しかし肝硬変や劇症肝炎などで肝機能が弱くなれば、処理能力も低下するため、血液中のアンモニアが増えます。アンモニアの正常値は30~80ug/dlです。
ビリルビン
ビリルビンとは胆汁に含まれる色素で、赤血球の中のヘモグロビンが壊れて出来るものです。これが間接ビリルビンと言われます。間接ビリルビンが肝臓で直接ビリルビンに作り変えられて、胆汁として排泄されます。
しかし、肝細胞の働きが低下すると、直接ビリルビンへの転換などがうまく出来なくなり、血液中のビリルビンが多くなります。
胆汁の流れ具合を見る
γ-GTP
γ-GTP(ガンマーグルタミル・トランス・ペチダーゼ)は胆道系酵素で、毛細胆管で作られます。胆汁の流れが悪くなると、血液の中に出てきます。慢性活動性肝炎、肝硬変、胆汁鬱滞症になれば、γ―GTPが上昇します。特にアルコール性肝障害の場合に著しく上昇します。
ALP
ALP(アルカリホスファタ-ゼ)も胆道系酵素で肝臓で作られ、胆汁の中に排泄されます。肝臓などの異常で胆汁の流れが悪くなると、ALPが血液の中に流れ込み、数値が高くなります。
直接ビリルビン
直接ビリルビンは胆汁の流れが悪くなると、血中に流れ込み、数値が高くなります。
総コレステロール
胆汁の流れが悪くなると、本来胆汁に排泄されるべきコレステロールは血液に逆戻りし、数値が高くなります。
肝炎の慢性化度を見る
γ-グロブリン
慢性肝炎が進んだり、肝硬変になっていくにつれて、免疫担当のγ-グロブリンが増えます。
γ-グロブリンの正常値は10.8~20.5%です。
ZTT・TTT(膠質反応)
ZTTはチモール混濁試験で、TTTは硫酸亜鉛混濁試験です。血中のアルブミンが減少し、γ―グロブリンが増加すると、ZTT、TTTがともにそれに反応して、激しく上昇します。
正常値はZTTが2.0~7.0Uで、TTTが0.6~5.1Uです。
ICGテスト
ICG(インドシアニングリーン)という緑色の色素を腕に注射して、15分後に反対の腕から採血し、色素が血中にどのぐらい残っているのかを調べるテストです。健康な人ではICGが肝臓から胆汁に排泄され、血中には10%以下しか残りません。肝硬変などで肝臓の血流が低下し、解毒機能が低下すると、数値は高くなります。