副腎の構造
副腎(Adrenal Gland)は左右の腎臓の上方・後腹膜内にあり、1つが約4~5g程度の内分泌器官です。副腎は大きく分けると内側の髄質(Medulla)が全体の20%、それを取り巻く皮質(Cortex) が80%を占めます。皮質はさらに外側から球状帯(Zona glomerulosa:皮質の15%)、束状帯(Zona fasciculata:皮質の75%)、および網状帯(Zona raticularis:皮質の10%)にわかれます。
副腎はホルモン産生の場所であり、さまざまなホルモンが産生されています。
ステロイドホルモン:副腎皮質で産生
ステロイドホルモンはコレステロールから合成されるため、コレステロールによく似たサイクロペンタノパーハイドロフェナントレン核を基本構造に持っています。ホルモン合成のためのコレステロールの約80%は血中のLDL(Low-density Lipoprotein)が副腎細胞表面の受容体に結合した後にエンドサイトーシスによって取り込まれたものが利用されます。細胞内に入ったコレステロールはミトコンドリア内でプレグレノロン(Pregnenolone)に変換され、ホルモン合成が始まります。
ステロイドホルモンは下記のように分類されます。
ミネラルコルチコイド (Mineralocorticoids:電解質コルチコイド)
球状帯の細胞で産生されます。代表的なものとしてアルドステロン(Aldosterone)があり、ナトリウムやカリウムイオンの濃度調節に関与しています。
グルココルチコイド (Glucocorticoids:糖質コルチコイド)
束状帯の細胞で産生されます。 糖質コルチコイドの作用のほとんどはコルチゾール(Cortisol)によるものであり、残りはコルチコステロン(Corticosterone)によります。
(1) 糖新生作用 (Gluconeogenesis)
糖質コルチコイドは糖新生に必要な酵素量を増やしたり、筋肉等の組織から血漿中へアミノ酸遊離を促し、肝臓での糖新生(グルコース)を促進、血糖値を上昇させます。また同時にグリコーゲンの合成や貯蔵も促します。逆に細胞でのグルコースの使用量を減少させます。
(2) 抗炎症作用 (Anti-inflammatory Effects)
外傷、感染、リウマチ等による組織の炎症反応はグルココルチコイドによって抑制されます。これは、蛋白分解酵素を含んだライソゾーム顆粒膜の安定化、毛細血管壁の透過性低下、炎症組織への白血球浸潤の抑制等の作用によります。また白血球からのインターロイキン1の放出を抑制して発熱を抑制します。
(3) 抗ストレス作用 (Stress Resistance)
ヒトや動物が身体的・精神的ストレスを受けるとACTHの分泌が亢進し、その結果、糖質コルチコイドの分泌が増加します。なぜ糖質コルチコイドが抗ストレスに重要であるかわかっていませんが、血中のアミノ酸、脂肪、グルコース濃度等を高めることによってこれらを必要とする細胞がすぐに利用できる状態をつくることなどが考えられています。
性ステロイド (Sex hormones)
網状帯の細胞で産生されます。代表的なものとしてアンドロジェン(Androgen)があります。
カテコールアミン:副腎髄質で産生
髄質にあるクロム親和性細胞ではアドレナリン、ノルアドレナリン, ドーパミン等のカテコールアミンが産生されます。これらカテコールアミンは主にアミノ酸の1つであるチロシンから合成されます。ドーパミンからDopamine β-Hydroxylaseによってノルアドレナリンが合成され、さらにPhenylethanolamine-N-methyltransferase(PNMT)によってアドレナリンが合成されます。血中に分泌されるのは最終産物であるアドレナリンがほとんど(約80%)です。
アドレナリンとノルアドレナリンはアルファ(α)およびベータ(β)受容体に結合します。アドレナリンはベータ、ノルアドレナリンはアルファ受容体により親和性を持ちます。アルファ受容体にはα1、α2があり、それぞれがさらに3つのタイプにわかれます。ベータにはβ1、β2、β3の3つのタイプがあります。これら受容体はすべてG蛋白共役受容体(GPCR)です。
アルファおよびベータ受容体と主な作用は次のとおりです。
受容体 | 作用 |
---|---|
α1 | 血管収縮、血圧上昇、散瞳 |
α2 | インスリン分泌抑制 |
β1 | 心筋収縮力増強、頻脈 |
β2 | 血管拡張、気管支拡張、糖新生亢進 |